木村伊兵衛とアンリ・カルティエ=ブレッソン

halujion2010-01-20

写真美術館開催3展を1日で見て廻るという強硬手段、
久しぶりでした。
まずは一番体力を使いそうなものから挑もうと、
木村伊兵衛アンリ・カルティエ=ブレッソン 東洋と西洋のまなざし展。
結論から言うと、とても素晴らしかったです。
現実の諸相をそれ以上に生々しく切り取ってある写真でした。
木村氏の作品はどちらかというと美しい構図ではなく瞬間そのもので、
迫りくる躍動感から人や町の息遣いが聞こえてきます。
それなのに写真だから動かないし黙っている。
分かるけれど分からない、どうしてなのか不安で仕方がない。
私はその差に動揺して苦しくなって、しばらく椅子で休んでしまった。
最後の陳列でフィルムがあったため、
幾多の写真の中から選ばれたのはそれが氏のセンスに他ならないのだと、
相対して見られたのが面白かったです。


アンリ・カルティエ=ブレッソンの作品はその点、
舞台が私の知らない国であったので平常心で見ることが出来ました。
木村氏の写真と決定的に違うのは、呼吸できる隙間があるということでした。
奥行きがあって、その中に光と空気が満たされています。
そしてデザイン性が高いのがモノクロゆえに極まっており本当に美しかった。
カタカタとフィルムが動き出して一つずつ映画になってゆく。
同じ時代のフランスの白黒映画が好きなせいかそんな想像をしました。


予想以上に精神力を要する展示でしたが、見ることが出来て幸せです。
さらに、これだけ打ちのめされたのに飽き足らず図録を買ってしまったのでした。