伝書鳩が帰ってこない

最近、とても涙もろくなった。
というよりは決壊したままになっていて常にうるうるなのである。
本を読んでも新聞のニュースも音楽を聴いても、うるうるがぽろぽろになってしまう。
場所の制限もないものだから、道を歩いてても電車の中でも湿度100%である。
そうか、これが梅雨というものなのかと無理に納得して面白がっている。


そういう意味で私の雨季はいつも4月だった。
多くの人が五月病にかかる一足前に、私はバイオリズムの低迷期という雨季を迎える。
けれども今年は3.11以後非日常を必死で漕ぎ進んだわけで、
世の中のバランスが崩れている渦中で私の慣性も例外ではなかったと言うべきか。
ただし、必ずしも落ち込んでいる訳でもない、今年は特別仕様の雨季。
これはなかなか良いと思っている。
涙が流れると気持ちがすっきりして穏やかになるのでね。


庭の塀の上を今日も妊婦の猫が通る。
妊婦と思っていたがいつまで経ってもそのままなのでただの肥満かもしれない。
珍しくこっちをふり向いたのでピースサインをしたらじっと見つめ、
またふいっと前方を見据え、
私が再びピースサインをしたらまたもやじっと見つめていた。
何度かそれを繰り返したのち猫は隣家へするりと音もなくすべり込んで行った。