Perefect Moment

いつぞや閉館間際にすべり込んだ東京オペラシティアートギャラリーにて。
曽根裕展「Perefect Moment」を見て来ました。
現在メゾンエルメスにも出展されていますが、大理石の彫刻シリーズが良かったです。
樹氷のようで美しかった木漏れ日を体現した作品などは、
刹那的一瞬を切り取って出すことで別の世界を垣間見ているような感覚になります。
おそらく遥か上空から見た都市…を掘り込んだ作品は巨大な船のようにも見えます。
通して、自分の時間の概念や、物との距離を掴もうとする意識が曖昧になって、
根源の沼にぽちゃっと落とされたようでした。
そしてそれは生理的に気持ちの良いものでした。


ゆとりがあったので上階の吉田夏奈展も見ることができました。
何十メートルにも及ぶ北アルプスの山々から始まる風景。
これは…ものすごいです。
私も登山をするので、見た瞬間「この人は山を登る人だな」と思いましたが、
やはりそのようでした。
作品は絵画ではなくてどちらかと言うと漫画・アニメに近い印象でした。
登る自分が溶け込んでいて、風景を見て描く絵ではなかったからです。
意識は山と渾然一体となり、自分だけの感覚で再構築されるのが登山です。
だんだんと自然界では現れがたい色彩に移行していくところからも、
(勝手な感想ですが)破壊衝動や恐れが見え隠れするところからも、
絵でありながら起承転結がありました。
いや、結はなく、承転が小気味良く繰りかえされて行くのでした。
吉田さんの書かれたテキストがすごく良かったので転載します。

危険を伴う秘境のなかに身を置き、
その場所が自分の美しいと認識する感覚を超えたとき、
ある種のパニック(=ショック)状態に入る。
そういった初体験の場所では、そこが美しいと感じるよりもむしろ、
恐れや不安を感じる場合の方が多く、
潜在意識で知覚し始めようと私の脳は働き始めてゆく。しかし時間が経過すると、
パニックを受けたその場所は自身の過去最高に美しい場所として
私の脳に新たにインプットされる。
そのような意識の拡大を私はBeautiful Limitの拡大と呼んでいる。

http://www.operacity.jp/ag/