おさびし山、梅ヶ丘

ほんのり寒さが弛んで来たので春の息吹を見つけに出かけました。
京王線に乗ってどんぶらこと進み、初めて降り立つ梅ヶ丘は実に静かなところでした。
くねくね細い道とゆるやかな傾斜というのが沿線の特徴で、
方向音痴の私はもれなく不安に駆られますが何とか公園にたどり着きました。ふう。

ぽつぽつと白梅の可憐な花が咲いています。
しっぽり匂いたつようだけども、意外と梅の木は香りはないのですね。
平日の羽根木公園はひっそりとして、時折散歩する老人とすれ違うくらいでした。

こちらは鮮やかな紅色をしていて目に染みるように美しかったです。
梅は木の幹が黒くごつごつしているために、
遠くからは花が咲いているのかどうかすらもわからないです。
でも近づくにつれ視界に赤みが差してゆき、気分の高揚を促します!
左下の枝には、鳥の餌なのかみかんが刺してありました。
梅に鶯、とばかり思っていたが梅のみかんに鶯、だったのか。

枝垂れの梅はぼた雪のようなポップコーンのような風情です。
景色にもやもやしたフィルターをかけて一歩先に進ませません。
写真はinstagramで加工していますが、
本当にこんな風に古い映画を見ているような気分になります。


しばし梅園を楽しんだわけですがやっぱり趣向を認めざるを得ませんでした。
理由、枯れ葉をさりさり砕きながら歩いていてこういうのを見てしまって。

古い木に新しい木が乗っかってそのまま生長しているよ。
頼もしい、わくわくする、植物のこの強かさが好きだな。

この人は腹の中に亜細亜の仮面を隠して春の祭りを待っている。
息吹どころか、地平にとどろく太鼓のリズムが聞こえてくるようですよ。


色味が少なくて一見地味ですが、
樹や草は花よりもずっと表情豊かで深淵に連れて行ってくれます。
未完成の得体の知れないものが蠢いている所のほうが好きです。
ああ、でも桜は待ち遠しいのでした。