幽体の知覚展

骨はどんな人間も平等になかに抱えているもので、
普段無意識で動かされ成長したりしている。
でも一度「骨だ」と意識すると、
死を思ったり恐怖感や不安がせり上がってくるのは何でなんだろう。
骨格標本は動物問わず結構好きなんだけども、
どうにもヒトの頭骸骨、髑髏のみ特別に嫌い。
恐怖や不安とはまた違ってただ気持ちが悪いというのが一番近く、
無比にもシャットアウトしたくなる。


森美術館での小谷元彦展「幽体の知覚」では、
それは巨大な頭蓋骨がぐるぐる回されている展示があった。
鍾乳石か樹氷のように時間をかけて形作られたような結晶状のそれを見て、
やっぱり気持ち悪かったが少し謎は解けた。
顔・頭の場所が感情を発する場所だからどうも嫌なのらしい。
死んでもなお訴えかける後ろに潜むものが私は駄目なようだった。
死んだ後の頭蓋骨やそれを模した物がすべて意味を持つとは思わないけど、
そう思ってしまうほどあの目の窪みの虚空の目力はどうだ。
うっとなる。
人間があんまり好きでないことも繋がっている様な気がしてならない。


そんな訳で「幽体の知覚」は美しくて面白くてすごく良い展示でした。
人によっては自分の内側を抉ってしまうかもしれませんが、
私はそれで随分すっきりしたので周りの人にもお勧めしています。
特にニューボーンシリーズ、
パイソンやビーバーなどの動物の動きを骨のみ残像で追って行く造形が、
想像もしない形になってゆくのが魅力的でした。


訳が分からない芸術もよいけど小谷さんの作品は訳が分かる芸術でした。
理解したというおこがましい話でなくて、
個々人に繋がる芸術だというのがすばらしいと思いました。
感覚も物理的にもです。
http://www.mori.art.museum/contents/phantom_limb/index.html