毛玉雲とちくわ


ある秋の夕暮れ時間、築地辺りを散歩しました。
刻々と空の色は変わってゆきます。
11月の雲は筆で水彩絵の具をさっと掃いたような感じなのです。
天使の髪の毛のように繊細でやわやわしています。
そこに橙色と水色がグラデーションで乗っかるのはとても美しい。
上空に髪の毛を集めた鞠玉が発見されたので写真を撮ってみました。

築地市場のメカニク建造物、「発砲持込禁止」と書いてあります。
私はこれを見て拳銃のことだと思って吃驚しました。
うわー市場なのになぜそんな警告が出ているのか、
血なまぐさいのは捌いた魚だけではなかったのかって。
何のことはない発泡スチロールの意味だったようなのですけども…。
ごみ集積所なのか、素敵にぎらつくこのひしめくパイプとタンク。
曲面に空の色がほんのり映りこんで季節の寂しさが一層沁みました。
鮮魚を売りにした店みせの熱いメッセージを魚、いや肴に、
ポッケに手を突っ込んで歩いてまわります。


銀座には全国のアンテナショップが林立しています。
私の出身県のアンテナショップで美味しいちくわを買いました。
S氏とそれをもしゃもしゃ食みながら歩き続けました。
歩きながらちくわを食べるというのは初体験でした。
スーツ姿のサラリーマンが行き交う道でちくわ…シュールでした。
でもね、持ちやすい・食べやすい・お腹に溜まる、
と良いこと尽くめではないかとちくわを見直したのでした。
VIVA CHIKUWA!


ギャラリー小柳にて池田亮二の展示を見る。
白い空間で数字の羅列、雨のように滝のように流れてゆきます。
この無駄のない美しさと乾いた感情に惹かれます。
彼の文章など読むと更によく分かるのですが、
数学的と芸術が見事に繋げられている。
頭が悪い私でもきちんと腑に落ちるスマートな考えを表されています。
池田亮二はすごく好きなアーティストです。


なまものとそうでないもののバランスが取れていた一日でありました。