赤瀬川原平写真展

カメラは散歩の導火線だ。
何か撮りたい、
何か見つかるかもしれない、
という小さな火に導かれて町を歩く。
ウォーキングは脚の筋肉だけの話になるが、
カメラがあると目が加わり、
感受性がスイッチされる。

こういう言葉が出てくる赤瀬川原平が、
とても好きで、とても羨ましく思います。
横浜市民ギャラリーあざみ野へ行って参りました。
彼の写真はいつも湿った感じがします。
じとっとしていて生々しく、
息を吸い込むと撮られた場所の匂いがぷーんとするみたいな。
町を切り取る手法でありながら観客の目に順じています。
やっぱり生来のセンスでデザインも良いんだけど、
全然かっこつけてなくて好きです。
くくっと忍び笑いを漏らしながら楽しませてもらいました。


私はこの人から町歩きの面白さを学んだと思います。
特に人工物と自然の駆け引きに目が留まるようになったこと。
創作という大きなくくりで言うと、
視点の転換を原点にして物をこしらえることがそうです。


別室では横浜市所蔵カメラ・写真コレクション展も開催。
私自身は大して写真も撮らないしカメラも拘りなどないんですが、
モノとしてカメラが魅力的で素敵なものなのだと知りました。
多くは木箱に収まっていて立方体に近い形です。
チーク材のしっとりしたこげ茶色の箱、ここから魔法が…。
1839年ダゲレオタイプ(銅版写真)は、それぞれが一点物。
加えて予期せぬ死別の心を慰める意味で用いられる事も多く、
額など装飾も凝ったものになっています。
モノクロームのステレオカードもたくさん並べてあって、
心ゆくまで立体視を楽しめるのでした。
見終わる頃には目がぐるぐる廻るようでしたが、
流行の3D映像なんて目じゃないなあと思いました。
紙切れ一枚でこんなに情緒たっぷりだなんて楽しくて!