越中するの巻

10月20日は散歩の醍醐味がむぎゅむぎゅに詰まったルートを歩きました。
一人で秘密にしておきたいような、でも誰かに教えたいような。
始まりは蔵前からです。
スカイツリーのお足下の町並みが最近とても好きでよく訪れます。

蔵前橋。隅田川には色とりどり形も楽しい橋がいくつも架かっていて、
観光汽船に乗って風を浴びながら順にくぐって行くのもそれは心躍るものです。

横綱(よこづな)ではなく横網(よこあみ)なのであった。
凝った川の生臭い匂いとホームレスの人々の住処をくぐり抜けて越中島へ。
所変われば人の顔つきも違うのは当たり前ながら、確実に東京の一端です。

東京海洋大学へ!
天文観測台があると聞いていたので、どれどれ、お邪魔します。
航海用天体暦の研究用および航海天文学教授用に使用された建物とのこと。
海と空はやっぱり切っても切れない関係なのでした。

素敵な、八角形二階建て煉瓦造りの赤道儀室です。
屋根の半円形ドームは手動で360°の回転が可能であったと…。
手動でごりごりドームを動かしながらふうふう言って、
天文学を教えるひげもじゃ眼鏡の先生(イメージ)いいなあ。
なんだか宮沢賢治のお話の中みたいです。

昭和20年終戦直後に校舎を米進駐軍に占領され、
内部施設は撤去されてしまったという歴史の生き証人なのでした。

東京海洋大学には明治丸という陸にあがってしまった船があるのです。

こちらは陸ではなく、晴海運河にぽつねんと停泊している屋形船です。
揺らめく水面と鮮やかな青杭の切っ先がきりりと美しくて良かった。

相生橋の袂でふと気がつくと妙な緑地帯があり、
好奇心に突き動かされ降りて行くとそこは思いもよらぬ空間でした。
川とほぼ同じ高さで作られている遊歩道、
申し訳程度のガードレールの向こうは寄せる波。
水面がこんなに目線と近いのは新鮮で面白いけれど、
うかうかしているとざばあと水が降ってくるこのスリルは何だ!
どうりで足もとにフジツボやワカメのような生物が生息しているわけです。

橋の下に川の水が流れ込むまま歩ける遊歩道があるのでぽてぽて歩く。

可愛い水玉模様に騙されてはいけません。
水玉はそそり立つ円柱の上の面に過ぎないということが、
波が引いた時にわかった恐怖といったら足がすくむのに十分すぎるものでした。


佃、月島も同じように飛び石超えして湊へ降り立ちます。

見つかると良いな、と思っていたこの広場はあっという間に出会えました。
私は空気人形みたく無垢ではないけれど真似をしてベンチに座ってみる。
向こう岸、きらきらに輝いている。
そして振り返ると大きなビルがにょきにょき生えている銀座・有楽町。
けれどもここのぽっかり具合といったら不思議なほどでまるで自分の心の内。

相生橋で見かけた鴎は外灯の上におっちょんして良いフォルムです。
自分の足で歩いてみると街と街が繋がっている事がわかるので、
なんだか何処へだって歩いて行けそう、勇気が沸きます。