アンチアンニュイ


久しぶりのブログ更新となりました。
うなだれた陰々滅滅の毎日をゆきゆきて、
ぽっかり浮上してみたら月が変わっていたというありさまでした。
そういう時期は現実に重いとばりを下ろしたくて、
映画と本漬けになりあとはパタンと眠るの繰り返しです。
幸か不幸か素晴らしい映画と沢山出会えたので、幸でしょうね、
それらを記したらまた地面を踏みしめてお日さまを浴びようと思います。


エル・トポ
埋められたテディ・ベア、神父の衣装のはためき、フリークスの大行進と、
所々で美しく幻想的なモチーフにはっとさせられる。
血なまぐさいが後のATGを形作る構図と色彩であった。


プチ・ニコラ
フランスの少年達の眩しい膝小僧と靴下止めだけでぎゅっとなる。
すべて可愛くて幸せでお茶目で楽しいという、おとぎ話。


薔薇の名前
今年観た映画の中で一番心を打ちぬかれた素晴らしい映画だった。
ゴシック建築とミステリー、男色家の司書、宗教とはエゴの高まりか?
そして禁断のラビリンス図書館は鳥肌であった。
燃え盛るキリスト教会の塔の上、
書物が散り散りに舞うさまは何度も夢に見るほど脳裏に焼きついている。


冬の小鳥
韓国・フランス映画で、
孤児の女の子の表情が凄くてこちらの感情は吹き飛んでしまう。
現実はこんなものではないのだろうから、
上澄みの一部をすくい取ってある辺りある意味とても文学的ではある。
けれどよく出来ていた。私は映画をきっかけに孤児についての本を読み出した。


カプリコン・ワン
SFと見せかけて火星探査のロケットをめぐる国家の威信、社会の闇の話。
内容はよくあるアメリカ映画だったが、
最後の飛行機空中チェイスシーンが素晴らしかった…手に汗握る。
飛行機好きの人は一度見ておいて外れはないと思う。


地獄に落ちた勇者ども
恥ずかしながら初見、これも心をわしづかみにする素晴らしい映画だった。
画の美しさ、ストーリーとスピード感、申し分なし!
軟派な意見から述べると軍服フェチにはたまらない。叫びたいほどかっこいい!
これもどこか薔薇の名前に近いものがあり宗教とは何なのかと考えさせられる。
げに恐ろしきは人の心なり。


小さな中国のお針子
緑がいかにみずみずしく輝いて水しぶきがきらめく事か。
毛沢東政権に反した人間の再教育を施す目的で田舎に送り込まれた青年の話。
外国文学を禁じられた時代、ひっそりとバルザックを山の少女に聞かせる。
中国語は柔らかくて美しい発音だと思った。


他にも面白いものはあったし、見に行けず残念だったものもあったけれど、
東京に住んでいていいなと思うのはいつでも良い映画を山ほどやっていること。
私の頭の扉の中に素敵なものがいっぱい入って来てくれました。
今日からまた遡って日記もぽちぽちつけていこうと思います。