哲学堂

陽が優しくてついついまどろんでしまいお休みの日も半分過ぎた頃、起き出す。
新井薬師前からほてほて歩いて妙正寺川沿いの哲学堂公園へ向かいました。
ここは、黄みがかった斜陽がよくお似合いの、小さなパラレルワールドでした。

この公園の起こりは東洋大学の創設者である哲学者の井上円了が、
ソクラテス・カント・孔子・釈迦を祀った「四聖堂」を建設したことだそうです。
公園内を巡ると、なんと77箇所も哲学に由来する施設にゆきあたるのです。
それが時空岡、宇宙館、絶対城、感覚巒、万有林などと、
字面だけでもかっこいいのが揃い踏みなのでした…押し寄せる意識の洪水。

まる哲に縁取られたこの哲理門に到っては天狗と幽霊が左右に鎮座しています。
風神と雷神ではなく、阿吽でもなく、仁王像でもない、天狗と幽霊…。
天狗は物質界、幽霊は精神界の象徴であるとのこと。
時間をかけて目を凝らしてみたのですがどうも頭の辺りがはっきり見えなかった。
それがいささか鳥肌ものだったためにスタコラ逃げ帰りました。

園内はどこも苔が美しく広がっていて眼福です。
ベルベットの絨毯のようにしっとりと光沢を帯びているのでした。
股木の効果か盆栽の根元に住むコロボックル・ジャポネにでもなった気分です。

伐採されてもともがらにはならないのが自然界の掟です。
ハートの中からこんにちは、はたまた、ハートに火をつけて。

匍匐前進でもって苔の緑を舐めるように見ていると、
自分の大きさが全く頭から抜け落ちていることがあるようです。

地衣類は近づくと古本屋のようなスモーキーな香りがする、ような気がする。

小高い位置にある三学亭は庵のような顔をしながら近づくと魔方陣じみています。
おちおち休憩もできやしない、ドキドキがあふれているのが哲学堂の魅力です。

お腹がぱっくり開いていて、何かいいものを溜めている、あの子。
ゆかいでこわい妖怪にたくさん会いたい方には胸を張ってお勧め出来る場所です。

あっ歯形が残っている!誰の食べ残しのまるぼうろかな。どらやきかも。

と思ったらきのこでした、黄色いひだがわしわしと笑っているようです。

妖怪のあの子もいいけれどきの子もいいよ、生ものだから本当に一期一会です。

まるでマッチ棒のようなのや、

「上へ向かえ」なんて矢印のようなのや、

今晩しめじの炊き込みご飯もいいななんて思わせるようなのや。