NRQ live

この日は、外の空気を吸い込んで金木犀の香りを初めて感じた日。
今年のように長引いた酷暑であろうとも、
そう変わらない時期に花開いて香りを振りまいている。
植物の不思議にはいつも驚かされます。
10月と金木犀の香りの組み合わせには慣れ親しみすぎて、
想像しただけでも「うん、ああいう感じ」と、
ゴール地点の満腹感まで出てきてしまいます。
それでもやっぱり、深呼吸をしてみたり、遠回りで帰ったりする自分がいる。
夜は視覚が鈍るぶん嗅覚が冴えてキリキリと鼻に染み渡るため、
よりいっそう濃く感じます。これは沈丁花の季節も然り。


金木犀のすごいところは、
新宿の繁華街でも有楽町のガード下でも香りがふんわり漂っているという事です。
木なんて見当たらないような場所なのにもかかわらず。
秋のおすそ分けは平等に、そして突然に押しかけるものですね。
空は繋がっているという言い回しがあるけれどまさに空気は繋がっている。
脳内で風景に一枚レイヤーをかけ、小粒のオレンジ色の花を点描してみました。


それから東京駅を出てずんずん歩きます。
静まったオフィス街を越え八丁堀まで進み、七針というライブハウスへ行きました。
西脇さん(さかな)と桜井さんの演奏…暖かく優しい音楽でした。
体の螺子がゆるゆるになっていくのを目を閉じてうっとりと楽しみました。
私は飲めないけれどコーヒーの香りときっとよく合う音、
あんまり飲まないけれどお酒の痺れる味ともきっとよく合う音だろうと思いました。


お次は楽しみにしていたNRQ!
このままずっと聴き続けたいと思うくらい素晴らしかったです。
跳ねるリズムと叙情的なメロディと、
様々なものが触れあっては弾けてまるで泡のようになっていました。
吉田君の二胡は艶っぽくて、伸びやかに広がるあの音はなんともいえなかった。
中尾さんのドラムは、大人なのにやんちゃで、絶妙の軽さがあって、魔法みたい。
自然とにこにこしながら体を揺らしてしまいます。
パイカルの曲もいくつかありましたが、当たり前ながら別の曲ほどに違いました。
パイカルにあった緊張感と鬼気迫る感じが(これも好きでした)昇華して、
それであの泡のような透明感があるのかもしれません。
終演後吉田君に「もっと早く観に来ていれば良かったです」と伝えたら、
「全然遅くはないです」という答えが返ってきました。
本当にそうだと思いました。
大好きなバンドがまた一つ増えました、とても幸せです。