夜は瞬膜の此方

ずんぐりむっくり、コミカルな体型の蛙は小さな丘のように佇んでいる。
その眼はどこを見ているのでしょうか。

爬虫類・両生類はそれほど好きではなかったはずなのに、
いつの日からか興味津々になっている自分がいます。
せっかく都民の日で上野動物園に無料で入れるのだから、
普段蔑ろにしてしまいがちな子たちをピンポイントで楽しみつくそうと思って、
この度はぬめぬめぎらぎらした生き物ばかり見て参りました。

蛍光色のラインが美しいおちびさんたち。
まるで夜中に高速道路を走る時の目に飛び込む、幻覚めいた光線です。
毒を持っていたっけな。

図鑑で見るとグロテスクで辛いものがあるのだけど、
本物は意外と可愛いと思えたりするのでした。

古代魚のままのような不思議ななりをして悠々泳いでいます。

この鰐は細面にしましま模様で粋でした。
細い指先にまで命がいきわたっていることを思うと感動的です。

後ろ足のむちむちとぽってりしたお腹がたまらないです。
やっぱり鰐はいいなー見たこともない恐竜に思いを馳せます。

君の首はどういう仕組みになっているのか。
ガラスにぶつかりえん曲しながら随分くねっておりました。

大好きなゾウガメの前では私も興奮です。
そんな人間をよそに、頭もしっぽも出さずに昼寝のてい。
陸ガメは背中がもりっと大きくて抱きつきたくなります。
「ぞうの時間ねずみの時間」という本があるけれど、
生まれ変わるならゾウガメの時計の針を進めてみたいものです。


陰間からこっそりシリーズの始まりです。

石のはざまで静かにこっちへ視線を送っているように見える。

体ごと傾げてアッピールしているシルエットが健気です。

伏目がちで賢者の趣き、色が奥ゆかしくってきれいでした。

ガラスに映るお隣さんは実は君自身だよーそれでもにらめっこしています。

上目遣いとは反則技を使いよる…添えられた手ほどに天性を感じる。

こちらはわが道を行く派のひとですが、甲羅がキラリで惹かれました。

有閑マダムの怠惰な昼下がりといった風情で色っぽいのでした。


スローロリスだけは誘惑に勝てず帰りに立ち寄りましたが、
他には象にもキリンにも会わないで爬虫類・両生類館に全力を注いだ日でした。
やっぱりちいさいものにもそれなりに表情があるものです。
子供たちに混じってガラスにへばり付き、
目線を同じくらいにしてみると見えてくるものが沢山ありました。
ゾウガメがわらわらと群れているところに落ちる太陽の光が当たって、
甲羅を淡いオレンジ色に染める光景を夢想しながら帰りました。
それは世界の理想郷というか最後の砦のような気がします。