水族館劇場

千駄木から団子坂をぐんぐん登ってゆくと現れる妖しいノボリ。
ここではためいて市井の人々を呼び寄せるのも今日で暫く見納めです。
駒込大観音で催される水族館劇場の公演、恋する虜を観に行きました。

楽団のノスタルジックな演奏とともに、
幻とうつし世がごちゃまぜになって連れ去られるようです。
序幕、お客さんを取り込んでの外舞台では、
頭の上から声が降ってくる、水しぶきは上がり、風船売りが駆けてくる。
鉄の牙城に吸い込まれてゆく人たちは何を期待してここに来るのでしょう。
私は夢を見たくて、そして頬を平手打ちされに、来ます。
普段忘れがちな死を思うことと、あちらの世界を垣間見れる演劇なのでした。


演劇や舞踏は全身を使った生演奏なので、
こちらに向かってくる衝撃がそれはそれは大きいものですが、
今年は本当にすごかった、劇中何度も鳥肌がたって涙ぐみました。
水のサーカスとはよく言ったもので、滝のような水柱が立った時、
水の中からあるいは水の外から自分をも見つめていると知ります。
それは感情の集合体だから、あまり見て気持ちの良いものじゃないのです、多分。
だからあんなフラッシュバックみたく遠い存在に思えるのでしょう。


魅力的な演じ手が揃っておりますが、
私は風兄宇内さんという方がとても好きで、声も動きも光って見えます。
それから学魔・高山宏さんが生と死の狭間にある吸血鬼という役だったのは、
納得しすぎるくらい納得でした。
出来ることなら私もあの飛行機に乗せて頂きたい!
次の舞台に進む水族館劇場に手を振りながら。
素敵な一夜の奇跡をありがとうございました。