神代植物公園

5月はばらが一番きれいに咲く季節です。
ばら園といえば神代植物公園だというわけで、すわ、出かけます。

まずは好きな色、桃色の花のもとに一目散に飛んでゆきました。
この日はあいにくの雨天でしたが、ぷつぷつと雨粒ではずむ花びらも素敵でした。

鼻を近づけるとやっと天然の芳香がふんわり届きます。
ばらの印象が覆るほど、生花の香りはこんなにも儚く微細なものだったか。

自然の形は時に数学など超えて出来ている黄金比だと思います。
それとも、こういうものも全て数学的に表せられるものなのかな。

ぎんぎんぎらぎらの深紅のばら、その名も乾杯。
ビロードのように肉厚の花びらは、たっぷりの繊毛におおわれております。
舞台のカーテンを思わせる容姿になんだか眩しくなりました。

やっぱりばらは花の中でもスター性があって、それは別格です。
5人の兵に囲われた篭城のお姫さまのような白いばら、ファビュラス。

うん、こういう可愛らしく気取っていない野ばらのようなのが私は一番好きです。
緑率が高いのが単純にほっとして、笑顔になります。
私はもしかすると花がなくて茎と葉だけでも「良いね良いね」言うのかもしれない。

花を見てきれいだと思うようになったのはここ数年のことです。
幼い頃は特に、植物の花というのは少し怖いもので触れたくないものでした。
禍々しいというか露悪趣味というか…そう感じるのは変なのかと思っていました。
ところが飯沢耕太郎のきのこの本か何かを読んでいた折、
「花は生殖器であり生物の最も根源を示す部分である云々」という文があって、
私の嫌悪していた感情はここにあったのかとひどく納得したのでした。
そして、年とともに花を美しく思えるようになってきたのでした。

大人になって好きになるものが増えるのはとても嬉しいことです。
けれども時々、随分鈍くなったのだろうことに打ちひしがれる一瞬もあります。
だからせめてそれを忘れないように、こうして文字にしておこうと思う。

珍しい色模様のばらもあります。
この人はドクター・ファウスト、なんてかっこいい名前をお持ちなのでしょうか!

レインブーツで初めてお出かけ記念につま先を覗かせてみました。

ぎっしりと幾重にも詰まった一輪、ぽってりして重そうですが、
もいで手の中に収めたらひとつで花束一把分の幸せはありそうです。

上へ上へと伸びてゆくばらのアーチは雲を超えそうでした。