虫から蝸牛まで
ある日突然、一人暮らしに終わりを告げることになりました。
一匹の得体の知れない虫が私の部屋にやってきたからです。
お客さまを無下に追い払うわけにもいかないので、
好きにしてもらっていたら早や一週間、奇妙な共同生活です。
彼に必要なのは5mm四方、尚、干渉やコミュニケーションは皆無、
つまり共有スペースは100%であり0%でもある。
カーテンに掴まっているものの全く動かないため、
本当は死んでいるのかもしれないです。
それでは、やっぱり私の一人暮らしに変わりはないのか。
人間でいると忘れがちだけれど、日常に死はいつも付きまとうものです。
でも、彼は生きていると思います。
見ていないうちに場所が数cmずれていたりして謎の輩なのです。
虫と向き合っていると哲学してしまうので、夕方の散歩に出かけました。
八重桜は遠目で見ると迫力がありますが、近づくとずっと繊細なのがわかる。
シフォン仕立ての桃色のぽんぽんがそのまま落ちてくる瞬間は、
天からの贈りもののように思います。
ツツジも盛りで、雨上がりは一層色が濃くなるのでした。
デイジーの一種の、ゆで卵をまっぷたつにしたような花。
閉じ始めた花びらが雨を乾杯しています。
ひなげしはうな垂れていました。
この花はつぼみの産毛が結構な剛毛なので、
なんて雄々しい奴なんだろう、侮れない、と常々思っています。
大好きで大嫌いなかたつむりでおしまいです。
あと一ヶ月もしないうちに本物があらわれる季節になるでしょう。