昭島飛行機工場

今日も今日とて上空には飛行機がするりと通り抜けます。

ひっきりなしに飛行機の定期便が見えるこちらは、昭島です。
この日、昭和記念公園へ行こうと中央線をごとごと下っていたところ、
地図をめくったらたまたま「昭和飛行機工場」の文字が飛び込んできたのでした。
されば脊髄反射で、立川にて青梅線へ乗り換えておりました。

工場のため勿論一般の立ち入りは不可ですが、周囲をぐるりと歩いて廻ります。
春色の伸び上がりダクトも優しい雰囲気で一目で気に入りました。

一見、宮沢賢治の世界の中…農業高校の校舎みたいですが、
こんな朴直な建物の内側に航空力学が落とし込まれているかと思うと打ち震える。

広い敷地の西側はこんな風で親しみやすい空気がにじんでいます。
しかし東側はもっと硬質で、
立ちはだかる大きな鉄の断崖、闇に光る誘導パネル、締め切られたゲート。
中ではどういったことが行われているのでしょうか。
私がまだ現役の教員だったなら、
社会科見学は独断と偏見で、職権乱用と言われようとも、ここに決めます。
そして大人気なくこういう塔も全て登りつくしてまわるんだ。

飛行機が実際に働く空港は、ぴかぴかきらきらの無菌最新鋭施設だけれど、
生まれ故郷は誰だって、土か血かオイルの匂いのする場所のはずです。

すぐそばには玉川上水が流れていて散歩にうってつけの楽しい道が待っている。
下校中の小学生が「こんにちは」と挨拶をしてくれてとっても嬉しくなりました。

柵に巻きついたねじねじさんはそこかしこで見かけ、
季節はずれのクリスマス飾りのように儚く可愛らしかったです。

シの木には何が実るのか知りたいので秋にまた様子を見に来たいものです。

この辺りは、近くの福生横田基地のような独特の住宅造りが多かった。
南の国っぽい奔放な植物がわさわさ茂っていて不思議な味わいです。
そこに宿る南の国のチェシャ猫、もとい、双子の笑顔は鮮烈に残ります。


東京でのっぽのビルが鼻高々になっている場所なんてほんの一握りで、
子供だけに見える妖怪みたいなものも、
いる所には、まだまだ、いっぱい住んでいるのかもしれないと思う。
私はそういう子供大人になりたいので今、東京の西の方へ歩き続けています。