フリークスも人間も

halujion2010-02-20

夜想上映会 plus特集:モンスター&フリークスを観に、仕事後UPLINKへ向かう。
夜想の最新号で特集されたモンスター&フリークスをテーマに、開催される複数のイベントのうち私は映画上映の日を選びました。
この世にひとつしかないもの─フリークの世界を、
映画という一つの芸術で自分がどう考えるのか興味があったからです。


アレクセイ・バラバーノフの「フリークスも人間も」は良い映画だった。
物語は鉄道技師の娘の美しいリーザを中心に進んでいくが、
ヨハンと腹心ヴィクトルの二人の男が日影商売をしている主人公でもあって、
ブルジョワ階級のふたつの家を崩壊させてゆく。
主人を撃ち殺した上で、養子のシャム双生児の全裸写真を売りさばいたり、
貞淑な妻や娘を公衆の面前で鞭打たれる女にしてしまう。
まあ、救いのない映画なのだった。
でもフリークスがどうというより映画としてとても面白かった。


まず映像が退廃的な美しさで覆われていて触れたら壊れそうだった。
繰り返し現れる蒸気機関車と運河を走るぽんぽん船のシーンは、
次なる悪夢を連れて来る呼び鈴の役目を担っておりぞくりとする。
セピア色の画面から匂いたつ光と影は一瞬一瞬が詩のようで、
アパートメントの巨大な螺旋階段などにはくらくらした。
リーザのロマンチックな衣装と髪型は可愛くて、溜息がもれる。
そして何よりもシャム双生児の二人の歌うシーンが秀逸だった。
腰の辺りからくっついている二人が一つのアコーディオンを肩にかけて、
悲しげなロシアのクラシックを歌うのだった。


この映画で描かれている限りは、
フリークスと人間と(あえてそう表現するならば)双方にさしたる違いはなく、
「人間」のヴィクトルの不穏な笑みに怖気をふるうばかり。
弱者として描かれていた人たちが一番孤高で美しかったとは思う。


映画の後は今野裕一夜想主宰)+吉田アミトークショーがあった。
映画の中に出てきたシャム双生児は、
同じく美声で世界を巡業したチャン&エンをモデルにしていたということを知る。
初めて知る事、wwwに乗せられない話も有り、盛りだくさんの内容だったけれど、
私が一番印象に残ったのは視覚的情報のとらえかたの怖さについてだった。
PC上で見聞きした物は、
単なる変わったもの・面白いもので終わる可能性を大いに孕んでいる。
それは誤った情報になる危険性があるばかりか、
匿名性による新たな被害者がでることもあるということ。
昔の演劇の「自分にコトが降りかかる緊張感」なども交えてお話しておられて、
すごくすごく納得した。
生身で感じることを端折るな!というのは私も耳が痛いけれど気をつけようと思う。
様々な犯罪の変遷から察するに、
DNAレベルでヒト科がおかしくなっているというくだりについては、
私は背筋がぞっとしてしまい、ショックのあまり貧血を起こしたのだった。


少々硬い感想になってしまいましたが、
このイベントは本当に行ってよかったと思います。
そして編集者である今野さんの発想力と引き出しの多さには参りました。さすが。