斉藤真一展

吉祥寺美術館にて斉藤真一展を見にゆく。
赤よりも赫という字を好んでいたという彼の絵は、
どうやって作り出した色なのか、
自然界にはないようなどろりとした赤で満たされていた。
深く悲しくて人の顔がいつも奇妙にひしゃげている。
瞽女という盲目の三味線弾きを題材としているけれど、音はなかった。
いつも静まりかえった大きな額の中にぽつねんと目を閉じて居る人間。
この照り返す赤い色は斉藤真一の心象風景なのだなあと思った。


今年になってから私は強い色に惹かれるようになっている。
以前なら桃色や白を選んでそうな時に真っ赤を選ぶものだから、
手帳も鞄もカーディガンもぱきっとした色になってしまった。
少し前の日記にも書いたけれどこれは、
自分が強くなりたいと、殻を破りたいと、願う印だと思っている。


その後絵本屋さんに行き、斉藤真一の絵で緊張した心をほぐす事にした。
中央線沿いは、小さいけれど質の良い絵本屋さんが多くて嬉しい。
福音館書店たくさんのふしぎ「石の卵」と、
同じくこどものとも「しきぶとんさん かけぶとんさん まくらさん」、
トムズボックス早乙女民「毎日がマンガ」を買う。


どれも本当に素晴らしくて、手に取るとしっとりおさまるものたち。
しきぶとんさん…は私の大好きな漫画家の高野文子さんの初絵本です。
淡々とした絵の中にも色のセンスと線の柔らかさでもって、
偉大なる高野節が拍子を叩く、とんとことん!
高野さんの描く子供の足のうらは子供の心理そのものでぎゅーっとなる。
私もかけぶとんさんになって、
あの愛しい足のうらをぺろりと舐めて暖めてあげたい。
このおまじないを知っていればきっと大人も安眠間違いなしだろうな。