鉄橋に夜が引っかかる

府中の森公園を出た後は、東へほてほて歩いてゆきました。
でも本当はこんなはずではなかったのです。
公園を楽しんだら同じ敷地内のプラネタリウム銀河鉄道の夜の上映を見よう!
と考えていたのですが、私は何をはき違えたのか、
誤って府中郷土の森ではなくて府中の森公園に来てしまったのでした。
つまりプラネタリウムは府中郷土の森のほうであったというわけです。
森がたくさんあるのはいいけれど、混乱した自分にしょんぼり。
ゆえに、急遽街歩きに変更したのでした。


でもそれがとっても楽しくて良かった。
この辺りは調布飛行場があるため小型飛行機が頭上を飛びます。
立派な飛行機雲は青空をキャンパスにいろんな表情を見せてくれます。
低空なのでロマンチックな飛行機の型もよく見えてわくわくします。
と思うと、そばに偵察機と戦闘機が見えるような気がする…。
それは、航空自衛隊の基地でした。
胸中は複雑ですが、構内の管制塔とタンクや倉庫の佇まいは渋く、悪くなかった。


上空へ向かって何かを捕らえる巨大なフォークです。
雲を綿菓子みたく絡め取るのか、
お月さまをつきさして夜な夜な齧っていって新月にするための仕掛けなのか、
あんなフォークが家の屋根にも一つあるといいなあと思いました。

ある壁からにゅっと出たダクトはうんともすんとも言わなかった。
しみじみと、うねる管のような金属が好きです。
今にも動きそうなのにつんとそっぽ向いて知らん顔だから好きです。

盥に入れていたコーラの瓶はいつしか緑に覆われてサボテンになりました。
といった風情の不思議な物体は、実に雄弁でした。

西部多摩川線の路線に鉢合わせ、鉄橋の造形美に拍手喝采です。
切なくなるような静かな単線でごとごと揺られたのでした。

初めて訪れる路地を探検したのがとても楽しかったです。
日が暮れる過程を自分の足のスピードとともに味わえて満足の日。