足跡を追えば

新年のご挨拶に親戚の家へ車でごとごと出かけました。
まわりが田んぼで囲まれているために、すこんと抜けるように空が遠く感じます。
出迎えてくれた炬燵でぬくぬくのおじいちゃんは、
また一回り小さくなったような気がしました。
いつまでも元気でいて欲しいけれど、人間だからそれは難しいことで、
人はある時点で「大きくなった」から「老いた」と形容されるようになる。


広がる素晴らしい雪景色に、
車窓から見ていた辺りからもううずうずしていた私は、
一人で長靴を履いて散歩に出かけました。
日が傾きかけてだいだい色がほのかににじむ空の下、白菜も越冬します。
ここで昨日食べた人参や蕪や小松菜もはぐくまれるのかな。

民家の屋根にもやわらかく降り積もった雪があります。
こんな日でないと気付かないのは、狭間にも植物は生きるということ。

振り向いてみても、やっぱり私の足跡しか残らないのでした。
未踏の地はいつだって気分も踊ります。

と思ったらたぬきの足跡がありました。
たぬきは体の中央に四つ足があるのでちまちまとした跡が残るらしい。

観察すると狐も横断しているもようです。
人の知らぬ所で動物たちは縦横無尽に闊歩しています。

雪の軌跡に目を奪われていると危ない目にも遭います。
ぽっかり口をあけていたそこは用水路の交差点でした。ひやり

おぼろ豆腐の空に枝だけになった樹が美しく映えます。

目を凝らしてみると鳥が羽を休めていっぷく、ここにもそこにも、居ます。

このような穢れのないじゅうたんでしたが、
直後私がどんどこ走り回って飛び跳ねたので足跡だらけの大運動会になりました。
ここの田んぼの持ち主さんごめんね。

あざみも健気に雪を割って、ここにいますよと主張しているのでした。

人工物にだって、金属レールにだって、雪は平等に降りしきる。
白とさびた鉄の色が、なぜか素敵なコントラストです。

雪が降るだけで全く異世界になってしまう。なんて楽しい小旅行なんだろうか。