ドングリ団

今年もどんぐり団の躍動の季節がやって参りました。
活動内容は豊かな自然に向き合ってどんぐりを黙々と拾うというそれのみ。
けれどかがんで腐葉土のにおいを吸い込んだり、
普段とは違うふかふかの枯葉の上を歩くのは、
自分のまわりに秋のおくるみを感じてこの上なく幸せな気持ちになります。
団員はただ今のところ私一人です。



10月の終わり、吉祥寺井の頭公園へ赴きました。
この日はどんぐりの日と決めていたので朝も早よから準備をしていざ出発。
公園の中でも立派な樹木が連なっていて薄暗い所を選びます。
湿り気を帯びた土からは、
次の命の匂いと発酵する有機物のぷちぷち言ってまたたく音が聞こえるよう。



目が慣れてくるとそこらじゅうにあるわあるわの、
鈍いこげ茶色は不思議とぴかぴか光って見えてくるのです。
足元を見ると半径1mから動けなくなるほど、
発見と感動という要素におぼれてゆきます。
もちろんどんぐりどんだけではなくて、全てにです。
例えば予想以上にセミの抜け殻が多いことや。
きのこが生き生きと顔を出していることや。
短いスカートを穿いて来てしまったことが悔やまれましたが、
10分後には無茶な体勢も良いのか悪いのか気にしなくなっていました。



私の好きなモジャモジャ頭のくぬぎ氏は、かし氏に比べて少ない収穫です。
派手な帽子だけは転がっているのですがどうしてなのでしょう。
丸々している為に転がって埋まってしまうのか、
美味しいので動物たちの方が目敏く見つけるのか、
事実虫食い度が一番高いのもこのくぬぎ氏でした。


地面とにらめっこでごそごそしている私を見て、
どんぐり拾いを手伝ってくださったおじいさんがいました。
歩きながら東京と田舎についてのあるお話をしました。
実のある話が実を結び、
遂にはしいの実の穴場に連れて行ってもらって、
袋にいっぱい溢れんばかりの豊作となりました。
「こんなにあるよ、困っちゃうくらいだねえ」
おじいさんはそう言いながら驚くべき手さばきでしい氏を放り込む。
その速さを私はしばし唖然として見つめておりました。
むくむく袋は膨らんでくるし、
周りを歩いていた人達もどんぐりについて薀蓄を語りだすし、
で、思わず笑い出してしまいました。


街中ではこうは行かないだろうと思うような
人の壁があっという間に解けるどんぐりの魔法。
楽しくて柔らかな時間でした。
日が傾き影が伸びているのに気付いたのでおじいさんと別れました。
最後の「お腹いっぱいになるよ」の言葉で脳内は感嘆符だらけであります。
しい氏は生でも炒っても美味しいらしいけれど、
私は「自分の家の周りを森にするために植えよう運動」も、
今年からどんぐり団の活動の一つに決めてしまったのでした。


収穫はこのような模様です。

ジョッキにも盛りきれなかったしい氏一族の悲劇。

これはS氏が狭山で拾ってきて下だすった、おそらくこなら氏一族。