大竹伸朗、ネイチャー・センス

芝から麻布へ歩くみちみち考えていたのは、
東京の好きな地名についてでした。
もし名前だけで新天地を選ぶのだとしたら私の一等賞は麻布狸穴町だからです。
まみあなって響きだけでも何か楽しいものが詰まっていそうでわくわくします。
麻布は細野晴臣さんの生まれ育ったところでもあります。
変てこな坂道がいっぱいあるし(暗闇坂体験をしにいったこともある)、
狸せんべいは可愛いし、良いなあ狸穴町!もぐり込みたい!


狸穴のそば、東麻布のタケニナガワギャラリーへゆきました。
人気のない空間で大竹伸朗の展示を観て、
絵の具が注がれ積もった鍾乳石のような物体のにおいをかぎました。


さらに西に進めばバブリーな高層群は目と鼻の先です。
ネイチャー・センス展を観るため六本木ヒルズ森美術館の上にのぼりつめる。
私はいつも地図を持ち歩いているが都会は平面ではとても情報が足りません。
上にも下にももう立派に街ができているもの。
そんな場所であえて、日本の自然知覚力を考えるインスタレーションでした。


吉岡徳仁のWaterfallという光学ガラスのテーブル。
水の波紋をそのまま切り取ったかのような美しく透き通ったかたまりです。


吉岡氏のsnow、羽毛の雪景色がダイナミックに別世界へ連れてゆく。
けれども隅で地層のようになっているこの部分が私は気になってしまいます。

篠田太郎という人を私は初めて知ったのですがとてもとても、好きでした。
テクノロジーの発展した日常環境と人間との関係を再考。
つまり人が作り出したものも宇宙の絵巻物の1つで、
それを俯瞰してみた時、
自然と同様に美しかったり懐かしかったりするものということでした。
テーマは深く納得できたし純粋にデザインとしてかっこよいものでした。
これは「銀河」という作品。
天井の装置から一斉に点滴される水滴が、

ウォータークラウンと水紋を乳白色のプールに作る。
はっとする一瞬なぜかコンデンスミルクの香りが立ち込めて、深遠なり。

栗林隆のヴァルト・アウス・ヴァルト、黒いのは人の頭です。
小動物になって林のボーダーラインを消しに行けば謎は解けます。


自然知覚力という言葉の持つイメージが見事にひっくり返って、
もう一度でんぐり返って私の元へ戻ってきました。
どちらかというと、
かがみ込んで小さい所から大きな世界を見上げるタイプだったけれども、
自分が一度ぐーんとズームアップしてものを観ることの、
面白さと新鮮さは衝撃でした。
撮影可でしたが、すぐそこにあるのにカメラ越しで見るなんて、
勿体無いような馬鹿馬鹿しいような気分になってしまった。
そのためいつもに増してなげやりな写真ですが、
目の奥にはしっかり残って余韻がはりはりと振動しています。