BYE TOKYO CITY

星空を見上げて
寝台特急に乗って夜、東京を発ちました。
部屋の大掃除も満足に出来なかったけれど、
お正月さんは待ってくれないのであります。
トランクに適当な荷物をきゅっと詰めて、いざ。
年の瀬の慌しさそのものの勢いで、電車にぽんと乗り込んだようです。


サンライズ出雲という寝台特急は、
木目調のデザインとこじんまりした個室がとても素敵で人気の電車です。
鉄っちゃん達が駅ホームの駅員さんと張り合いながら写真を撮っていました。
その光景にびっくりした私は、
一列に並び大きな大きなカメラを構える彼らを写真に収めてみました。
水辺の杭に規則正しく並ぶ鳥のようで微笑ましい一枚です。
私も大きな乗りものは気分が高揚するので少し気持ちが分かります。
なんだか私の趣味はつくづく男の子みたいだなあ。


発車のベルが鳴り、
大きな天窓を仰ぐとオリオン座が輝いていました。
我が研究所ORION LABOがなぜオリオンかというに、
空が明るい東京でもまず観測できる星座だからです。
何処へ行っても上からそっと見下ろしてくれていて、
自分の立っている地上と空とのあわいに輝くつづみのかたち。
お友達に頂いた、武井伸吾さんという星景写真家の写真集に、
こんな言葉がありました。
「よく晴れた静かな晩、澄んだ冷たい空気の中、僕が星空から感じるもの。
それは温もりです。」
この方も、星空の下はほっとできる空間で我が家のようなものだと仰っています。
都会を離れてぐんぐん進む電車の中で、
一年の様々なことを思い出しながら私は星座版をくるくる廻しました。
天窓の四角の中での小さな天体観測でさえ、
おおいぬ座こいぬ座、おうし座、などなど豪華絢爛冬の夜の夢です。
嬉しくて涙が出ました。


と、感傷に浸る間もなく、
乗りもの酔いの激しい私は例に漏れず気持ち悪くなる…。
毛布をかむって唸っているうちに、人知れず朝日は今日も、昇る。
西日本の空気は湿っぽくて柔らかくて肌によくなじみます。
ドアを開けた瞬間から帰ってきた感慨が膨らみきって笑顔になってしまいます。
さあ、楽しい年越し!