美術館いろいろ

引越しの前に行っておきたくて駆け回った展示いろいろのことを、
忘れないように少しずつ記しておきたいと思います。
節電や設備修繕でプランが大幅に狂い企画者側も本当に大変だったことと思います。
そんな中でも、そんな時だからこそか、行ったことで私は心が落ち着きました。
ふーっと肩のこわばりがとれて、
目の前のものに対する感覚だけで生きていられてほどけるような気持ちでした。
周りにもそんな表情をしている観客が多く、きっとみんな同じだったのでしょう。


フェルメール<地理学者>とオランダ・フランドル絵画展@文化村
http://www.bunkamura.co.jp/museum/lineup/11_vermeer/index.html
フェルメールは陽だまりに愛されている。
透明感に溢れる絵画はとても優しく柔らかくまるで音楽みたいだった。
一方、大航海時代のあれこれ(地球儀や天体儀や地図やコンパス)を
随所に見つける楽しみもあったりして。
時代の科学が顔を覗かせているので今までない見方が出来た。


●フレンチ・ウィンドウ展@森美術館
http://www.mori.art.museum/contents/french_window/index.html
窓の全く意識が変わるその不思議な隔たりを開いてみる。
コンセプトは良いんだが内容自体は個人的にはまあまあ、かもしれない。
ニコラ・ムーラン、フィリップ・ラメットが見られたのは良かったが、
何かを打破するエネルギーというのはあまり感じられず、終始上品という印象。
現代美術はやっぱり今アジアが一番面白いと思うな私は…。


●シュールリアリスム展@国立新美術館
http://www.sur2011.jp/
期待を裏切らない楽しさ、まさしくワンダーランドだった。
シュールリアリスムって「人間の無意識の世界の探求をおこない、
日常的な現実を超えた新しい美と真実を発見し、
生の変革を実現しようと試みるもの」なんて言われている。
難しいようだけど要は何かをする時に邪魔をする壁がないことだと思う。
大好きなマックス・エルンストもたっぷり見られて満足した。
私の趣味は、幼い頃から父親がポール・デルヴォーやキリコを見せに
美術館に連れて行ってくれたからだろうと思うが、とても感謝している。
子供が見ても絶対に楽しいもの。


●幕末の絵師狩野一信 五百羅漢@江戸東京博物館
http://500rakan.exhn.jp/
引越しに間に合わずどうしても諦められなくて、わざわざ上京して観に行った。
安っぽい言葉だがそこらのサイケよりサイケデリックで連れさられること請け合い。
実際、途中何度も意識が遠のいて倒れそうになった(寝不足もあるけど)。
執拗な書き込みは日本人の執念深さが良い意味で現れている。書き手も観客も巻き込んで。
さらに洋風の陰影法、遠近法を取り入れたその画風は圧倒されること間違いなし…。
狩野一信は大昔の別冊太陽のデロリ特集か何かで知ったのだったが、
なんじゃこりゃーと思ってそれ以来忘れられずに居たから全百幅見られるなんて夢みたいだ。
おまけ情報!
最新号の芸術新潮の狩野一信特集はよく出来ていて見やすく、本展の図録買うよりもお勧め。
芸術新潮 2011年 05月号 [雑誌]


ヘンリー・ダーガー展@ラフォーレミュージアム
http://www.lapnet.jp/event/event_l110423/
ヘンリー・ダーガーとは謎に包まれた人で、
非現実の大国という物語の制作は、
人に見せるためでも余暇の楽しみでもなくて自分が自分であるための砦、箱庭だった。
それが何にも敵わないところだなあと思うところがある。寒気を感じる。
そういう他人に見せないはずのものを見ているのだから、
私達はそれ相応のショックをそれは受けるはずだ。
少女のイノセンスと殺戮シーンの差をどうのこうの言う人が居るがあれは当たり前だ。
しかし淡い色合いの可愛らしい洋服と花畑というチュールを纏ってそれは美しかったよ。


岡本太郎展@国立近代美術館
http://www.momat.go.jp/Honkan/okamoto_taro/index.html
岡本太郎こそはその場で見て感じる、それだけなので何も言わない。
代わりに渋谷駅に飾られている「明日の神話」にまつわることを描こうと思う。

作品の右下に新たに付け加えられた福島第一原発事故をモチーフとしている絵の件は、
ニュースにもなって一時的に騒がれたけれど、
チンポム(アート集団)の仕業だったと聞いて、割と好きな人達なので凄く納得した。
実際に私もそこを訪れて見たけれども、
面白い事をするなあ、芸術ってこういう風にあるものだなあって肯定的に思った。
作品を傷つけるわけでもなく更新していて、
おまけに自身の展示の布石になっているなんて上手いことをする。ある意味時代の寵児
岡本太郎や敏子さんは空の上から笑って面白がっただろうね。